テクノポートの永井です。
より多くの人に自社の技術を認知させて、特徴を理解してもらい、そして必要と感じてもらうためには伝えるための工夫が必要です。今回は「その技術の伝え方」についてまとめましたので、参考にしていただければと思います。
この記事の目次
技術を伝える難しさ
技術の伝え方を紹介する前に、技術の伝えることの難しさについて共有したいと思います。
そもそも「技術を理解した」というのはどういう状態でしょうか?私は自分の立場(経営、設計、品質保証、購買など)において「その技術が使えるかどうかを判断できる状態」のことだと思います。ではなぜ相手に技術を伝え、理解してもらうことが難しいのでしょうか?その理由は大きく3つ考えられます。
1.相手の立場によって求める情報が異なる
例えば、経営者であれば技術を使って得られるベネフィットやメリットの情報を求め、設計者であれば具体的なスペックを知りたいと思っているため、伝えたい相手によって伝え方を変えないといけません。
2.相手が技術を理解するだけの基礎知識を持っていない場合がある
ほとんどの人が専門分野以外の技術については知識を持っていないため、技術を理解してもらうための道筋を立てなければなりません。
3.技術の細かな説明だけでは、技術によって得られる機能価値を想像してもらえない
相手はその技術を自社の製品に利用したときにの「機能価値」を知りたいと思っているにも関わらず、伝える側は専門用語を多用し、不必要なほどの詳細を伝えがちです。どれだけ高い技術でも、機能価値を想像できなければ、相手は聞く耳を持ってくれません。
以上のような理由で、技術を伝えることは難しくなってしまいます。だからこそ、わかりやすく伝えるためには工夫をしなければなりません。
技術をわかりやすく相手に伝えるために
ターゲットを決める
技術を伝えるときには、まずはターゲット(伝える相手)を決めましょう。ターゲットを決める時には仕事内容で分けることで「相手にどのような技術の基礎があり、どのような情報を求めているのか」を想像しやすくなります。
例えば下記の様な分け方です。
- 同分野の開発者
- 他分野の開発者
- 品質管理担当者
- 購買担当者
- 生産技術担当者
- 研究者
- 一般の人
同分野の開発者であれば専門用語を多用して、自社の技術を高いレベルで伝えることができますし、他分野の開発者でれば基礎から伝える必要はありますが、大まかな説明でも理解してもらえます。
他にも、品質管理担当者であれば品質を改善するための情報、購買であればコストを削減するための情報、生産技術であれば工数を削減するための情報などを求めていることが想像できます。
伝える情報を整理する
ターゲットが決まったら次は「理解してもらいたい技術」の内容を整理します。ここでポイントになるのは、相手が求めているものは「現在の課題を解決するための情報」ということです。ターゲットによって技術の詳細を求めているのか、それとも技術によって得られるベネフィットなのかは異なるため、情報を整理する前にターゲットが抱える課題を洗い出してください。
例えば、ターゲットが抱える課題の一例として
- 設計 :製品の小型化
- 品質保証担当者:量産品の品質の改善
- 購買担当者 :製造コストの削減
- 生産技術担当者:製造工数の削減
- 経営者 :自社のブランド力向上、販売数の拡大
などがあります。このような課題をもとに、自社の技術がターゲットに対してどのような恩恵をもたらすのかを整理してみてください。
技術の伝え方
技術を視覚化する
技術を伝える際に有効な手段の一つが技術を視覚化することです。視覚化方法は様々ありますが、
- グラフ
- 表
- 図
- 画像
- 動画
- 現物
が一般的です。
パラメータを変化させることで性能が変化する場合はグラフを、内部構造など視覚化することでわかりやすくなる場合は図を、技術を使用した事例を見せたい場合は画像や動画を使うなど、伝えたいターゲットや技術内容によって最適な方法を選んでください。
視覚化方法 | 向いている技術 | 注意点 |
---|---|---|
グラフ | 状況の変化において技術差が出る技術 | 条件を明確に示す 縦軸、横軸の単位を記載する 従来品と比較ができるようにする どれほど効果があるのかの説明文を入れる |
表 | 最高値、最低値などが物をいう技術 | 従来技術との差異も数値で示す。 |
図 | 内部構造など視覚化することでわかりやすくなる技術 | 図のクオリティを上げる |
画像 | 色や表面のキレイさなどで技術差がわかる技術 肉眼では見ないものの可視化が必要な技術 |
画像のクオリティを上げる 画像の中に注釈など入れる |
動画 | 動作や音などで技術差がわかる技術 | 短くまとめる |
現物 | 画面では分からない触覚を感じるこで差異が分かる技術 | その場で試せるように工夫する |
技術を使って得られる機能価値を提案する
技術を使って何を得られるのかをこちらから具体的に提案することで、ベネフィットが伝わりやすくなります。
例えば、
- 落としても割れないスマホを作れます。
- 耐久年数を2倍にできます。
- 製品の大きさを今の80%にできます。
などです。経営者や技術開発長などのスペックよりもベネフィットを重視する方に有効な手段です。
技術の根拠や実績を説明する
自社が技術を持っていることを誰が見ても理解できるように、技術の根拠を示すことも大切です。特許や論文などの第三者から評価された内容があればベストですが、取引のある企業や設備など一般的な情報でも構いません。
特に、量産技術を求めている大手企業は、相手企業が持っている技術の信憑性、品質管理能力、量産能力、不具合時の対応力などの総合的な力を見極めるために「大手企業との取引実績がある」ことを求める傾向にあります。
まとめ
技術を伝えることは思っている以上に難しいことですが、ターゲットを決め、情報を整理し、見せ方を工夫することで、伝えやすくすることは可能です。
技術を伝えるためには、試作品の製作費用、実験用のサンプル費用、資料作成に要する工数などのコストがかかります。それでも、新規顧客を開拓するためには技術をわかりやすく相手に伝えられることが必要になるため、ぜひチャレンジしてください。