元エンジニア。工業系エンジニアライターの石川です。製造業に強いライターとして、社長挨拶の代筆から、技術紹介、助成金の申請書などなど、さまざまな文章を書いてきました。その経験を元に、製造業に特化した「伝わる文章の書き方」を全4回にわたってご紹介します。
目的別、文章の型の紹介
第3回目は「目的別、文章の型の紹介」です。前回までは文章を書くための準備や、ちょっとしたテクニックについてお伝えしてきました。その中で、文章には目的ごとに型があり、目的に合わせた型に沿って書くと文章が書きやすいことに触れました。そこで今回は、目的ごとの文章の型をご紹介します。
1、紹介記事は事実と特徴を手短に述べよ(ホワイトペーパー・製品紹介等)
ホワイトペーパーや製品紹介など、企業がもつ技術について伝えたい文章の型は次のようになります。
- それは何か(何の会社か)
- 何に使うのか(何ができる会社か)
- (他社や旧製品に比べて)どこが、どう素晴らしいのか
- 3によって何が可能になるのか
ポイントは事実を淡々と伝えることと、特徴を端的に伝えることです。このときに注意しなければならないのは「新たな価値観を創造する」や「最先端の技術が拓く未来」のような、カッコいいけれど実体のない言葉に逃げないこと。第2回でもお伝えしましたが、このような言葉からは何の事実も分かりません。
機密などの問題もあり、表現が難しい場合もあるとは思いますが、自社の良さを伝えるためにも、一歩踏み込んだ内容を盛り込みましょう。また、他社や旧製品との比較も大切です。よほど唯一無二のサービスであれば問題はありませんが、多くの企業では競合他社との競争に勝たなくてはなりません。類似サービスや製品、旧製品との比較を入れ、自社の優位性を伝えましょう。
またこのときに言葉に頼りすぎると、文章だけが長くなる可能性があります。図や表、写真も併用しながら、分かりやすく表現しましょう。
2、活動報告は5W1Hを意識せよ(導入事例や展示会レポート)
技術や機械、システムの導入事例や、展示会への出展の様子を伝えるときには、次のような型が使えます。
- いつ、どこで、行ったか
- 何のために行ったか
- 何をやったのか
- どんな結果が出たのか
当たり前のように思えますが、どこかが抜けると伝わらなくなるのが活動報告の特徴です。伝え漏れが出ないよう、型にそって情報を整理しましょう。また意外と失念しがちなのが、1の、いつ、どこで行ったかを書くことです。特に実施した年(年号)は抜けがちです。
Web上の記事であっても、印刷される記事であっても、何かの拍子に数年前のものが見返される可能性は少なくありません。記事内で紹介されている活動報告が新しいものなのか、古いものなのか、すぐに判別できるようにするためにも、実施日の表記は年からスタートさせるといいでしょう。特に展示会の場合、同じ名前の展示会が数年おきに同じ都市で開催されるケースも多いですから、年号の表記は大切になります。
また実施された(する予定の)場所を伝える際には、必ず都道府県から記載しましょう。仮に県庁所在地であったとしても、市町村の場所は遠方の人には分からないものです。また「丸の内」のように、国内に複数の同じ名前の地名がある場合もあります。正確さを求めるためにも、都道府県を書き忘れないようにしましょう。
次回はライティング技術シリーズの最終回。製品の選び方やコラム、申請書などの文章の型をお伝えします。