元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場です。製造業に関連する気になるニュース、製品、技術などの他、技術ライティングについて取り上げていきます。
今回は伝えたいことを理解し、知りたいことを考えて書く重要性についてです。
伝えたいことを理解する
何かについて文章を書こうと思ったとき、忘れられやすい2つの点があります。それが、伝えたいとしていることをよく理解すること。そして、伝えたい相手が知りたいことをよく考えて書くことです。自分の日々を記録する日記のようなものであれば、この点はあまり考えず好きに書けば済みます。しかし、何かを伝えるためであって、それを伝えたい誰かが明確にいるのであれば、この2つは非常に重要になります。
まず、伝えたいことを理解するという点。例えば、自社のホームページに載せる製品紹介の文章を書くとします。その製品は新発売のもので、以前よりも様々な性能がアップしています。そうなると、どの性能が、どのぐらいアップしたのか伝えたいと考えるかもしれません。また、性能アップにより、今まで使えなかった別の分野にも使えるようになったことが、伝えたいことになっているかもしれません。
伝えたい点が何であるのか明確にして、その点をしっかり、明確にわかるように文章内に盛り込みます。伝えたいことが明確になっていないと、その製品の全体的な説明だけに終わり、何がよくなったかわからない文章になってしまいます。遠足の感想文で、何が楽しかったのか書くべきところを、電車に乗ってどこにいって何をした、おしまい。そんな文章になってしまう感じです。伝えたいことを、箇条書きでもいいので書き出すなど、明確にしておくことが必要です。
特に、技術系ライティングサービスといった、クライアントがいるライティングではこの点が重要になります。クライアントとのヒアリングや、提供された資料から、クライアントがどの点を特に伝えたいのか理解しなければなりません。クライアントから更に深く伝えたい点を引き出すことも必要です。
伝えたい相手が知りたいことを考えて書く
伝えたいことを理解したら、次は伝えたい相手が何を知りたいのか考えます。こちらが一方的に伝えたいことを書き並べても、伝えたい相手が知りたいことでなければ最初の数行で読み飛ばされます。伝えたい相手はどのような人で、そういう人は何を知りたがっているかを考え、必要な情報を過不足ない量で、伝えたいことを元に書いていきます。
例えば、伝えたい相手が機械のエンジニアであれば、「輝くステンレス筐体が・・」とか「高速に移動する力強いアームが・・」と言われても、だからどうしたという話になります。それよりも、「ステンレス製の筐体により耐塩性、耐酸性が高まり・・」とか「従来のXXより、20%剛性を上げたアームにより、移動速度がおよそ10%向上し・・」のように、エンジニアの知りたい情報が、具体的に数値も使って書かれている。このように、伝えたい相手に合わせて、伝えたいことを表現して書くことが何よりも重要です。製造業向けの技術ライティングでは、クライアントがいて、売りたい相手が明確に決まっている場合がほとんどなので、この点は特に強くなります。
広く一般に向け、誰でもわかる文章を書くのは非常に難しい作業です。人それぞれ考えることも、感じ方も違い、経験や知識の量も違います。それらすべてに当てはまる文章を書くのは至難の業です。伝えたい相手を明確にすることで、その人が何を知りたいのか考えやすくなり、文章は書きやすくなります。文章を書くことは、設計やプログラミングのような、論理的な作業に似ています。伝えたいことを理解し、伝えたい相手が知りたい内容に合わせ、論理的な流れを考えて組み立てていけば、相手に届きやすい文章になります。