テクノポートの五月女です。製造業の作業には、複雑な機械工程や危険な作業が多く含まれています。これらを効率的かつ安全に行うために、作業手順書が使用されます。ここでは、作業手順書を動画化する事例、メリット、およびその方法について紹介します。
この記事の目次
作業手順書の種類と事例動画
作業手順書は、現場ごとに求められる内容が異なるため、その種類は多岐にわたります。ここでは、作業手順書を大まかに分類し、それぞれの事例動画を紹介します。
操作ガイド
株式会社千代田精機 圧力調整機の取り付け方
この動画は、製造業でよく使用される産業ガスシリンダーに必要な圧力調整機の使い方を解説しています。音声なしで視聴されることが多いため、テロップを追加して理解しやすく工夫されています。また、動画内で重要なポイントや注意点が示されており、視聴者が危険なポイントを確実に理解できるようになっています。研究所や工場によって使用するガスや環境が異なるため、独自の手順書が必要です。特に産業ガスは漏れが命に関わる危険性があるため、動画を使って手順書を説明することが理解促進に役立ちます。
技術指導
沖縄県教育委員会 教育支援ビデオ
沖縄県の教育委員会ではアーク溶接の基礎の動画を作成しています。溶接作業は、高温を発生させて金属を接合する工程であり、非常に危険を伴う作業です。火災や火傷のリスクがあるため、安全面の説明が多くされています。良い例と悪い例が映像と音声を通じて示され、視覚と聴覚を通じて理解を深めることができます。企業ごとに設備や手順が異なるため、動画を活用することで新しい担当者も迅速に内容を把握できるようになります。
メンテナンス・点検ガイド
株式会社堀内機械 油圧シリンダエア抜き方法
文章で説明すると複雑になりがちな内容も、動画であれば視覚的に確認できます。正しい状態の動画を記録しておくことで、問題が発生した際に違和感を察知しやすくなります。メンテナンス作業は頻度が低いこともあり、担当者が変わった場合に適切な引き継ぎが難しいことがあります。動画化することで、実際の作業手順を確認できるため、引き継ぎの際の手間を省くことができます。
設置・組み立て手順書
ヤマハ発動機株式会社 リニアコンベアモジュール「LCMR200」設置手順動画
製造業の現場では、機械や部品の納品後に組み立て作業を依頼されるケースが多々あります。新任の営業担当者が手順書を見ながら作業を行うこともありますが、動画を用意しておくことで、組み立て時の確認が容易になります。また、代理店販売や協力会社へのサポートにも役立つため、動画化することで多くのメリットが得られます。
作業手順書を動画化するメリット
紙マニュアルよりもわかりやすい
作業手順書を動画化することで、視覚や聴覚を活用し、情報を多角的に伝えることが可能です。メラビアンの法則によれば、コミュニケーションにおいて、言葉そのものが占める割合はわずか7%であり、残りの93%は視覚情報や音声・トーンによって伝えられると言われており、非言語的な要素が大きな割合を占めます。動画にすることで、文章だけでは伝わらない、複雑な工程をわかりやすく伝えることが可能です。動画はこの視覚と聴覚の要素を最大限にいかし、紙マニュアルでは伝えきれない細かなニュアンスや動作のタイミングを効果的に伝えることができます。そのため動画化することで、作業者が理解しやすく、記憶に残りやすい形で手順を学ぶことができ、ミスの防止や作業の効率化にもつながります。
教育の統一化とコスト削減
製造業では、先輩社員がOJTを通じて仕事を教えることが一般的です。しかし、一度の作業で全てを覚えるのは難しく、教育には多くの時間と労力がかかります。動画を活用することで、手順や注意点を標準化し、社内教育の質を統一できます。さらに、動画は何度でも見返すことができるため、教育効果が向上し、繰り返し教育を行う必要が減ることで、結果的にコスト削減にもつながります。
外国人労働者の教育
現在日本の製造業において、外国人の労働者が2割いるというデータがあります。言葉の壁や文化の違いにより、日本語だけでは伝わりにくい細かいニュアンスも、視覚的に理解できる動画を活用することで、教育担当者の負担を軽減し、重要なポイントを効果的に伝えることができます。さらに、動画に多言語対応の字幕を追加することで、より多くの外国人労働者が内容を理解できるようになります。文化的な違いを考慮した具体例や注意点を取り入れることで、理解が深まり、教育の効果がさらに高まります。
動画を内製化する方法に関して
撮影機材と使用する編集ソフトに関して
機材は一眼レフカメラがあれば望ましいですが、現在ではスマートフォンでも十分に高画質な映像を撮影することができます。狭い場所など状況によっては、スマートフォンがかえって便利なこともありますので、一眼レフカメラにこだわる必要はありません。
編集ソフトに関しては、パソコンに標準搭載されているソフト(WindowsならClipchamp、MacならiMovie)で十分対応可能です。より高度な編集を求める場合は、Adobe Premiere Proがおすすめです。パンフレットなどで使われる資料は、Adobe Illustrator、Photoshopで作られていることが多く、Adobe Premiere Proであれば、その資料を簡単に動画に盛り込むことが可能です。パソコンがなくても、最近ではスマートフォンアプリでも簡単に編集ができるようになっているため、状況に合わせてツールを選択するようにしましょう。
撮影のポイント
ずっと同じ画角でもいいですが、一つのシーンでは引きで撮った全体の動画と、アップで撮った注目ポイントの動画を2点撮影するようにしましょう。この2つを動画に活用することで、わかりやすさだけではなく、メリハリがついた動画にすることが可能です。
編集のコツ
撮影した映像の不要な部分はカットし、シーンを自然に繋ぎ合わせることが大切です。また、説明文をテロップとして追加することで、視聴者に分かりやすく情報を伝えることができます。
会社で、イラストなどがある場合は映像とともに追加するとさらにわかりやすくなります。工場などの騒音が多い部分で撮る場合は、現場での解説は避け、音声を別途静かな部分で収録し、後から編集で追加することで、クオリティが高い動画を作成することができます。
外注する時のコストと安価で発注する方法
コストの考え方
動画制作の費用は、大きく分けて「企画」「撮影」「編集」の3つに分類されます。
企画では、動画の台本にあたる絵コンテや撮影スケジュールを決める香盤表を作成します。この段階が動画制作の核となるため、工数がかかり、どの制作会社でも費用が高くなりがちです。
撮影は、企画で作成したスケジュール(香盤表)に基づいて進行します。小規模なプロジェクトでは、カメラマンとアシスタント1名のチームが一般的で、半日撮影で10万円程度が目安となります。
編集に関しては、撮影した映像のカット編集、テロップ追加、BGMや効果音の挿入などを行います。特に、2Dアニメーションや3D CGの編集は工数が多く、費用も高額になります。たとえば、3D CGの制作では、5秒の映像で50万円程度の費用がかかることもあります。
動画制作にかかる全体のコストを抑えるため、どの段階でコスト削減が可能かを検討することが重要です。また、制作前に、制作会社との打ち合わせで明確な目標と予算を設定しておくと良いでしょう。
動画制作を安く外注するには
動画を外注する際、すべての工程を外注するのではなく、特にコストがかかる企画部分と撮影を自社でやることで、コストを削減することができます。編集作業に関しては、クラウドワークスやランサーズなどのアウトソーシングサイトを利用することで、コストを削減できます。これらのプラットフォームでは、作業者が多く、比較的安価で外注先を見つけることが可能です。
動画編集を外注する際は、事前に具体的な要件やイメージを明確に伝えることが重要です。また、初回の取引で評価や実績を確認し、信頼できるパートナーを選ぶことで、トラブルを避けることができます。
作業手順書を動画化するときに注意するポイント
NG例を盛り込む
製造業の作業には、特に危険な作業が含まれることがあります。熟練の技術者には当然のことも、新人には伝わりにくいため、NG例や禁止事項を動画に組み込むことが重要です。これにより、安全教育が効果的に行われ、作業中の事故やミスを防ぐことができます。また、NG例を具体的に示すことで、作業者にとって危険を未然に防ぐ意識が高まります。
見栄えにこだわりすぎない
動画制作において、質の高さにこだわりすぎて制作が遅れることがありますが、最も重要なのは実用性です。初めは見栄えよりも内容を重視し、実際に使用しながら改善を行うことが望ましいです。PDCAサイクル(計画・実行・確認・改善)を活用して、動画の質を段階的に向上させることができます。最終的には、実用的でわかりやすい手順書動画を作成することが目標です。動画のフィードバックを受け入れ、定期的に見直しを行う体制を整えることも重要です。利用者からの意見を反映させることで、より実践的で効果的な手順書動画にすることができます。
まとめ
作業手順書を動画化することで、危険な作業や複雑な作業がさらにわかりやすくなります。担当者が頻繁に変わる部門や新人が多く入る部門の作業を動画にすることで、教育の手間を削減することが可能です。まずは記録としてでも動画を撮影し、データとして残していくことで、企業の価値が高まると思いますので、ぜひ挑戦してみてください。
テクノポートは製造業1,000社のWebマーケティングを支援してきた実績があり、動画コンテンツの制作も可能です。製造業での動画制作に興味がある方は、ぜひお問い合わせください。