現役エンジニアで製造業系ライターをしている一之瀬です。『技術は人に伝えられる形にして初めて技術と呼べる』をモットーにエンジニアの業務では、先行開発から量産開発まで幅広く関わりながらその技術を残す活動をしています。
この連載では、どうすれば使われ続けるマニュアルや作業手順書を効率的に作れるのかを、私の経験を元に紹介していきます。今回は「マニュアルが使われない理由とその対策」について実例を元に紹介します。
この記事の目次
マニュアルが使われない理由と対策
せっかく時間をかけてマニュアルを作成しても、使ってもらえなければ作った意味がありません。マニュアルが使われなくなる理由としては、次のような点が挙げられます。
- マニュアルの情報が古い
- 記載されている手順がやりにくい
- マニュアルが行方不明
これらの課題に対して、私が自分の仕事を通して試した施策の中で効果的だったものを紹介します。
マニュアルの情報が古い
定期的にマニュアルが更新されていない場合、マニュアルに記載されている情報が古い場合があります。「最初はマニュアルを使っていたとしても、マニュアル通りにやっているはずなのに上手くいかないことがあり、原因を調べてみるとマニュアルが古かった」このような経験がある人も多いでしょう。
マニュアルに書いてあることは改めて確認し直さないため、マニュアル自体がミスを生み出すことになり、使われなくなっていきます。対策としては、マニュアルを更新する担当者と更新の時期を明確にすることが有効です。担当が明確になっていれば、マニュアルに関する修正情報が集約され、決められたタイミングで最新化されます。
随時更新でも良いですが、忙しくて更新されない場合もあるでしょう。マニュアルの内容によってタイミングは調整が必要ですが、更新が必要なタイミングを四半期ごと、半期ごとで設定しマニュアルを更新しましょう。
記載されている手順がやりにくい
同じ仕事であっても、人によってやり方が違うことがあります。マニュアルがあり、最初はマニュアルを見ながらやっていたはずなのに、自己流になってしまうのはなぜでしょうか?
マニュアルに記載されている手順通りにやった結果、手順を面倒に感じたり、簡単にこなせる方法を思いついたりすると、自己流のやり方で業務を進めます。
最初に作成する際にマニュアルのみでレビューするのではなく、マニュアルを見ながら実際に問題なくできるか作業をしてもらうのがおすすめです。実際に作業をする中で出た課題を作成中のマニュアルに反映しておけば、業務に支障が出るレベルで使いにくいことはないでしょう。さらにレベルアップするためには、担当者の元に情報が集まるようにマニュアル改善リストを作っておくことをおすすめします。
- マニュアルの修正ポイント
- 誰が記載したか(内容の詳細を確認するため)
- マニュアルに反映したかどうか
最低限、これらの項目が管理できれば十分なため書くのが面倒にならないように、簡単なフォーマットにするのがポイントです。
マニュアルが行方不明
特に、頻度が高くない業務を行うときのために作ったマニュアルで多い課題が、マニュアルを作ったはずなのに行方不明になってしまうことです。久々にこなす業務をマニュアル無しで、時間をかけて進めることになります。対策はシンプルで、すべてのマニュアルの置く場所を決めておくことです。できれば管理No.を付けて検索性をよくしたり、業務分野別にフォルダ分けをしておくと分かりやすいでしょう。
シンプルな施策ですが、確認する頻度が高いマニュアルと同じ置き場にあれば、マニュアルを探す際にまずそこを確認する癖がつきますのでおすすめです。
すべての対策を実践するのが難しい場合
ここまでマニュアルが使われ続けるための対策を紹介しました。実際には仕事が忙しく、すぐにすべての施策を取り入れることはできないかもしれません。
優先順位をつけて取り組む必要がある場合には、最初に「マニュアル改善リスト」を作成するのがおすすめです。すべてのマニュアルに関する改善要望を集約することで、個々のマニュアルとそのリストを確認すればすべて完結します。
後の施策は時間に余裕ができたときに取り組んでいけばよいでしょう。
使い続けられるマニュアルは更新されている
マニュアルが使われなくなる理由と、その対策について紹介しました。置き場がわかって情報が更新されていれば、マニュアルは使われ続けます。マニュアル改善リストは、マニュアル自体をきれいに直すものではありませんが、現状のマニュアルに対する改善点を確認できるので、セットで使えば更新されたマニュアルと同等の効果を発揮できます。
業務を効率よく進め、時間を生み出し、レベルアップしていくためのマニュアルが逆効果にならないように取り組んでいきましょう。
次回はマニュアルのテンプレート・フォーマットについて紹介します。