テクノポート、技術ライティング事業部の佐々木です。2022年3月、『記者ハンドブック 新聞用字用語集 第14版』(共同通信社、以下記者ハンドブック)が発売されました。共同通信社は、NHKや全国の新聞社が共同で設立した通信社で、放送局や新聞社に記事を配信しています。この記者ハンドブックは、その通信社の記者向けに、記事の書き方や、表記上のルールなどをまとめたものです。初版は1956年の発行と長い歴史があり、報道機関だけでなく、広く一般の人に読まれる文章を書く人々の参考書の定番といえる存在です。自社のWebサイトやオウンドメディアのライティングに関わる方は、6年ぶりに改訂されたこの記者ハンドブックを入手して、1度は通読してほしいと思います。特に、用字用語の表記をまとめた用字用語集のパートは、「こんなときはどう書いたらいいんだろう」と迷ったときの頼れるツールとしてとても役立ちます。
今回は記者ハンドブックを題材に、コンテンツの表記統一の重要性について説明します。
この記事の目次
コンテンツの表記や用字用語に気をつけることの意味
インターネットの普及は、私たちが目にする文章の量を圧倒的に増やしました。最近は動画も増えてきていますが、SNSの書き込みやつぶやき、ブログ、メールマガジン、Webメディアなど、コンテンツの中心は文章ベースです。個人が発信するものはさておき、企業のWebサイトに掲載されている文章や、オウンドメディアのコンテンツを読んでいて、誤字や言葉の間違った使い方、表記の揺れを不快だと思った経験はありませんか? 「雰囲気」を「ふいんき」と書いていたり「~ざるを得ない」が「~ざる負えない」と書いていたりするのを目にすると、単なる表記の間違いだけでなく、なんだかそのコンテンツが全部間違っているんじゃないかと思われてしまうかもしれません。
私がWebニュースメディアの編集部にいたとき、読者からの声の中に「誤字や間違った表現が多い。これだからWebは信用できない」というものがありました。そのWebニュースメディアの場合、記者が書いたものをデスクと呼ばれるまとめ役がチェックする程度で、書籍や新聞記事のように、文字や文章のチェックを専門に行う校正を通すことはありませんでした。きっとその読者の方は、校正が入ってきちんと整理、統一された新聞などの文章に慣れていて、そのように感じられたのでしょう。
文章自体が間違っていたら、読み手に正しく内容を伝えることはできないのはもちろんですが、用字用語がぶれていたり一部の表現が間違っていたりしただけでも、読み手の信頼感を失わせるには十分です。例えば、1つのコンテンツの中に「センサ」と「センサー」が混在しているだけでも、そのコンテンツの内容やそれを掲載しているWebサイト全体に不信感を持つ人はいるのです。
記者ハンドブックの使い方(用字用語事例)
先ほどの「センサ」と「センサー」のような用語表記の揺れは、文章チェックツールなどですぐ見つけることができますが、表現の揺れや使い分けの間違いとなるとそう簡単にはいきません。以下の表現の使い分けに注意していますか? こうした表記の使い分けについて記者ハンドブックの用字用語集の項目に辞典風にまとめられています。
「荒い」と「粗い」
「荒い」は、勢いが激しい状態、乱暴、乱れを表現する場合に使います。「荒療治」「荒技(あらわざ)」「金遣いが荒い」など。
「粗い」は、精や密の対語で、大ざっぱ、粗雑であること。「網の目が粗い」「粗削り」「粗見積もり」など。
「お勧め」と「お奨め」
「お勧め」はある行為を促す意味で使う。「読書を勧める」
「お奨め」は人や事物を推薦する意味で使う。「良書を薦める」
このような例は他にも、「押さえる」と「抑える」、「変える」と「代える」と「換える」と「替える」、「掛ける」と「架ける」と「懸ける」、「止める」と「留める」、「収束」と「終息」と「集束」などたくさんあります。同じ字でも場合によって送り仮名の有無を変える「並」と「並み」といったものもあります。
また、いわゆる「カタカナ語」(外国の地名含む)の標準的表記や、注意すべき社名、登録商標の言い換えについても載っています。「インターフェース」「チューンアップ」、「富士フイルム」(×富士フィルム)、「キヤノン」(×キャノン)、「ロボットスーツ」→「パワードスーツ」、「テフロン」→「フッ素樹脂」などこれもかなりたくさんあります。とはいえ、技術ライティングという視点で見ると、記者ハンドブックのカタカナ語の表記は、一般的ではあっても、ものづくり業界の標準やエンジニアが使う言葉とは違うことも少なくありません。そのようなときは自社コンテンツ用に独自の用字用語集を作るとよいでしょう。
記者ハンドブックの使い方(書き方)
記者ハンドブックには、表記や表現使い分けについてだけでなく、分かりやすい記事の書き方にも多くの項目が割かれています。「」や()が入った文章での句読点の打ち方や、・(中点)ほか符号や記号の使い方も、一度は目を通しておくとよいでしょう。しかし、企業コンテンツのライティングをする上で、記者ハンドブックの項目の中で私が最も重要だと思っているのが、差別語や不快語の項目です。ここには、使用に注意すべき不適切表現について書かれています。今回の版(記者ハンドブック 第14版)から加わった、「ジェンダー平等への配慮」という項目と併せて、コンテンツを作る上で欠かせない考え方や表記の例が書かれています。女性や男性をことさらに強調したり特別扱いしたりする表現は、かつて多く使われていたこともあり、無自覚に書いてしまうこともあるかもしれません。しかし、そのような表現、文章のあるコンテンツは、いまや、企業イメージを傷つけるだけでなく、場合によってはいわゆる炎上につながる可能性もあるということに、常に留意する必要があります。
まとめ
記者ハンドブックはさまざまなコンテンツを作る上で、広い分野で参考にされている理由の一端がお分かりいただけたかと思います。テキストコンテンツ作成に関わっていて、もしこれまで記者ハンドブックに目を通したことがなかったら、今回の新版発売を機に、ぜひ手に取って読むことをお勧めします。気になるところを拾い読みするだけでも、きっと役に立つことがたくさん得られると思います。言葉の使われ方(表記)は徐々に変わっていくものなので、旧版なら持っているという方も買い換えをお勧めします。
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