技術ライティングコラム

ホワイトペーパーの作り方の全体像と詳細【情報整理シート公開中!】

【執筆者紹介】卜部克哉
この記事の執筆者
卜部克哉
会社名:テクノポート株式会社
執筆テーマ:Web広告、Webマーケティング
【経歴】
通信機器メーカーでの法人営業を経てWebマーケティングコンサルタントへ。セールスとWebマーケティング(サイト改善/SEO/Web広告など)両方の視点から製造業の認知拡大とリード獲得施策を得意としている。

【寄稿実績】
製造業にとってオンライン展示会は“使える”のか? コロナ後の可能性を考える(MONOist)
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こんにちは。テクノポートでホワイトペーパーの制作を担当している卜部です。BtoB企業では、潜在顧客からのリード獲得を図るためにホワイトペーパーが活用されています。

ホワイトペーパーは、顕在層よりも広い潜在層に向けて、インバウンドマーケティングの一環として作成されます。作成プロセスでは、マーケティング戦略、ターゲット設定、構成作り、執筆、デザインと様々な工程を経て完成します。

今回の記事では、ホワイトペーパーの作り方を解説します。

また、「ホワイトペーパー作成のための情報整理シート」も公開しています。個人情報の入力なしでダウンロードいただけますので、ぜひご活用ください。

「ホワイトペーパー作成のための情報整理シート」は▶こちらからダウンロード◀できます。
※個人情報等の入力は不要です。クリックするとファイルがダウンロードされます。

BtoB企業におけるホワイトペーパーとは

ホワイトペーパーは、従来は政府や公的機関が発行する調査報告書や資料を指していましたが、企業におけるマーケティングの文脈では、リードを獲得するために、製品やサービス、その他潜在顧客が参考となる有益な情報をまとめた、Web上でダウンロード可能な資料のことを指します。

BtoB企業がホワイトペーパーを制作する目的は、製品やサービス資料をダウンロードするような顕在層よりも、さらに広い潜在層をターゲットとしてリードを獲得したい場合に適しています。

全体フローについて

ホワイトペーパーの作り方の全体的な流れは、次の図のようになります。

戦略編

まずはホワイトペーパーの内容や中身を決める前に、マーケティング全体の視点からホワイトペーパーの施策の位置付けや活用方法を検討する必要があります。

全体のマーケティング戦略での位置づけ

ホワイトペーパーはインバウンドマーケティング(プル型でユーザーが自社の情報を見つける手法)での活用においては、コンバージョン率の向上が主な目的になります。

自然検索やWeb広告により自社サイトへの十分な来訪者がある状態で、製品やサービス資料をダウンロードしてくれる顕在層よりも、さらに広い潜在層へのリードを多く獲得(=コンバージョン率の向上)するためにホワイトペーパーが主に活用されます。

つまり、ホワイトペーパーを設置する際は、集客施策も同時に整備する必要があります。

活用方法

活用方法としては主に以下のようなものがありますが、これらを例にして活用方法を検討する必要があります。

  • Webサイトに設置することでコンバージョン率の向上を図る
  • メールマーケティングで配信することで、リードのナーチャリング(教育・育成)を行う
  • Meta広告のリード獲得型広告用のコンテンツとして配信し、広告からの新規リードを獲得する

KPIの考え方

ホワイトペーパーのKPIは以下のように整理することができます。

  • Webサイト等に設置し、コンバージョン率の向上を図ることが目的の場合
     →獲得できたリード数をKPIとする(例えば10件/1ヶ月など)
  • メールマガジンでのナーチャリングを目的とする場合
     →メールの開封率やサイト内回遊率をKPIとする

企画編

ホワイトペーパーの戦略、つまり全体のマーケティングの中での位置づけや活用方法、KPIを決めた後は、ホワイトペーパーの内容をどのようなものにするかという企画を行います。

企画を細かく分けると概要企画と詳細企画に分けることができます。概要企画はどのサービスを訴求するか、ターゲットの大枠を決めます。

詳細企画はターゲットを深掘りして、具体的なペルソナまで落とし込みます。

概要企画

概要企画は次の3つの視点で立案していきます。

訴求したい製品やサービスを決める

数ある製品やサービスの中から、まずは何を売り出したいかを決め、その製品やサービスに関連するホワイトペーパーを作っていきます。注力製品は担当個人の想いではなく、会社全体の方針として決められることが多いため、上長や役員への確認が必要となります。

これが意外と決められないことも多いのです。

マーケティングファネル軸でのターゲットを決める

マーケティングファネルについては細かく分ければ非常に細かくなりますが、ここでは大まかに潜在層と顕在層の二つのどちらかを考えればよいでしょう。

潜在層向けには、できるだけキャッチーでかつ社会的に興味を持たれているテーマに関するホワイトペーパーを作るのが望ましいです。

顕在層に対しては、できるだけ製品に近い情報を掲載するのが望ましいです。例えば、製造業の外観検査ソフトウェアを開発している会社であれば、潜在層向けにはテーマを「製造業DX」など、顕在層向けにすれば「外観検査ソフト導入のためのチェックリスト」などのテーマになります。イメージは湧きますでしょうか。

大枠のテーマを決める

訴求したい製品と大まかなターゲットが決まれば、大枠のテーマを決めやすくなります。先ほどの潜在層か顕在層のお客様が何を知りたがっているのかを想像しながら、大枠のテーマを決めていきましょう。

詳細企画

次は詳細企画です。詳細企画ではペルソナを設定します。BtoBのターゲットの場合は、部署や役職を決めます。部署や役職を決めた後は、その人がどのような情報を欲しがっているかを考え、テーマ決めに役立てます。

例えば、設計開発部門のマネージャークラスをターゲットにする場合は、技術的な情報や市場動向などの情報が好まれることが予想されます。

構成の作成

ホワイトペーパーの概要企画と詳細企画が決まったら、次は構成の作成に入ります。

ホワイトペーパーの構成の作り方はこちらの記事で詳細を解説しておりますので、ご覧ください。

簡単にご説明すると、構成は概要構成と詳細構成に分かれます。

全体構成について

全体構成のテンプレートは▶こちらからダウンロード◀いただけます。
※個人情報等の入力は不要です。クリックするとファイルがダウンロードされます。

  • ページごとに何を記載するかの概略がわかる構成
  • エクセルやスプレッドシートで作成する
  • 全体の流れやトピックの順序を把握できる

詳細構成について

詳細構成のテンプレートは▶こちらからダウンロード◀いただけます。
※個人情報等の入力は不要です。クリックするとファイルがダウンロードされます。

  • 各ページの中身の構成
  • ワイヤーフレームの形式で作成さする
  • ページ内のコンテンツの配置や構造が分かる

執筆

ホワイトペーパーの構成を作った後は、テキスト情報を執筆していきます。ホワイトペーパーの執筆の際のコツや注意点は、主に次の2つがあります。

結論ファーストで、簡潔に、短めの文章で執筆する

例えばパワーポイントで作成する横長レイアウトのホワイトペーパーでは、基本的にインフォグラフィックや画像など、ビジュアルに訴えかけるデザインにすることが多くなります。

これは、文字数が多いホワイトペーパーを作っても、読者は細かいところまでは読まないという前提に立っているためです。

文字をできるだけ読まなくても、意味や製品の良さが伝わるよう、ビジュアルと最低限のテキストで執筆していくことが理想的です。

情報を構造化する。または箇条書きにする

詳細構成の箇所で説明した通り、1ページの中で情報をうまく整理していく必要があります。

そのためには論文のように起承転結を持った文章よりも、例えば「3つのポイント」や「対策前と対策後」のように、情報を構造化したり箇条書きで整理して執筆していく能力が求められます。

デザイン

ホワイトペーパーの構成を作り、テキストを入れ込む執筆が完了したら、次はデザイン工程に入ります。デザインの流れは主に次の3ステップを踏みます。

1.過去作成したホワイトペーパーや他社のホワイトペーパーを参考にしながらトーンとマナーを決めていく

色使いやテキストのフォントなどを決め、ホワイトペーパーが持つ印象を規定していきます。会社のデザインのレギュレーションやブランディングも条件になるため、そこも押さえていきましょう。

2.アイコンや写真、その他の図表やインフォグラフィックなど、使用する素材を固める

これは文字通りですが、使用する素材を選んでいきます。例えば営業資料でお客様に説明するための図表などがあれば、それらを十分に活用したり、写真素材は有料のレンタルフォトサービスを利用しながら素材を決めていきます。

3.枠や背景、強調のためのデザインなど、実際にデザインの作業を行う

できれば誰でも編集しやすいようにパワーポイントを使ってデザインをしていくことが望ましいです。AdobeのIllustratorやPhotoshopを使ってデザインすることも可能ですが、編集できる人が限られるため、普及しているソフトを使いましょう。

BtoB企業におけるホワイトペーパー作り方のコツ

最後に、全体を通しての作り方のコツを説明していきます。

語り口はプロフェッショナルとして

ユーザーはその分野のプロフェッショナルが作成した資料だと思ってホワイトペーパーを読みます。「〜だと思う」「〜かもしれない」といった曖昧で断定しない口調や、カジュアルすぎる表現は避けるようにしましょう。

図解を効果的に使用する

ホワイトペーパーをダウンロードしてもらっても、読んでもらえなければ意味がありません。読んでもらうためには、ユーザーが直感的に理解できることが重要です。

よって、図解とテキストのバランスを意識して作成しましょう。よく使う図解として、フロー図、マップ図、ベン図があります。適切な箇所で使ってみてください。

ダウンロードしてもらえるタイトルにする

ユーザーがホワイトペーパーをダウンロードするかどうかは、タイトルによって大きく左右されます。ターゲットと課題、解決策が明確なタイトルだとユーザーに興味を持たせることができます。

例)「品質管理担当者の工数削減を可能にするAI画像検査装置」

数値データを入れる

ホワイトペーパーには、企業のコラムやWebサイトに載っている情報よりも深い内容が求められます。解決策の根拠となる数値データがあれば、記載するようにしましょう。

実際の写真を活用する

自社の設備や商品を紹介する際は、実際の写真を活用すると効果的です。加工技術の紹介であれば、サンプルの写真を載せましょう。具体的なイメージがわき、問い合わせにつながりやすくなります。

まとめ

BtoB企業においてホワイトペーパーは、潜在層のリード獲得を目的として作成されます。ホワイトペーパー作成には、戦略編、企画編、執筆、デザインという一連の工程が必要となります。

  • 戦略では、マーケティング全体の中でのホワイトペーパーの位置づけや活用方法、KPIを検討します。
  • 企画では、訴求する製品・サービス、ターゲット層、テーマを決定し、ペルソナに落とし込んだ上で構成を作成します。
  • 執筆の際は、結論をフロントに置き、簡潔で構造化された記述が求められます。
  • デザイン面では、伝わりやすさを意識したレイアウトやビジュアル素材の選定が重要になります。

戦略と綿密な企画、分かりやすい執筆とデザインを経て、ホワイトペーパーは潜在層への効果的なアプローチ手段となるため、ぜひ当記事の内容を活用してみてください。

この記事の執筆者
卜部克哉
会社名:テクノポート株式会社
執筆テーマ:Web広告、Webマーケティング
【経歴】
通信機器メーカーでの法人営業を経てWebマーケティングコンサルタントへ。セールスとWebマーケティング(サイト改善/SEO/Web広告など)両方の視点から製造業の認知拡大とリード獲得施策を得意としている。

【寄稿実績】
製造業にとってオンライン展示会は“使える”のか? コロナ後の可能性を考える(MONOist)
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